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ポッドキャストとは 2025年06月30日

Z世代が牽引する「耳」の時代:デジタル音声メディアの進化とビジネスチャンス

1. はじめに:今、なぜ音声メディアが注目されるのか?

日々の情報収集において、皆さんはどのようなメディアを活用されていますか? 多くの方がスマートフォンでニュースを読んだり、動画を視聴したり、SNSをチェックしたりする時間を過ごしていることでしょう。しかし、今、静かに、そして確実に私たちの情報摂取のあり方を変えつつあるのが「音声メディア」です。

「音声メディア」とは、その名の通り「音」のみで成立するメディア全般を指します。これには、従来のラジオ放送に加え、インターネットを介して配信されるデジタルラジオ番組、ポッドキャスト、オーディオブック、そして音声SNSなどが含まれます。本記事では、特に中小企業の皆様のビジネスチャンスに直結する可能性を秘めたポッドキャストや音声配信サービス、デジタル音声広告といった「音楽以外の音声コンテンツ」に焦点を当てて解説していきます。

では、なぜ今、音声メディアがこれほどまでに注目されているのでしょうか?その背景には、主に以下の3つの要因が挙げられます。

  • 利用の定着とデバイスの普及: 近年、デジタルによるラジオ番組配信サービスや音楽配信サービスの利用が私たちの生活に定着してきました。さらに、高機能なワイヤレスイヤホンやスマートスピーカーなどの音声聴取デバイスが広く普及したことで、ユーザーがデジタル音声コンテンツに触れる機会が格段に増えています。2010年以降のスマートフォンの普及も、デジタル広告市場全体の急拡大を後押ししており、音声コンテンツへのアクセスも容易になっています。

  • 新しい情報発信ニーズの高まり: 音声コンテンツは、その手軽さから、法人メディアだけでなく個人に至るまで、新しい情報発信の手段として注目を集めています。ポッドキャストや音声配信サービスを通じて、多種多様なコンテンツが日々生み出され、流通が始まりつつあります。実際に、ポッドキャストユーザーの13.5%は番組配信経験があり、そのうち8割が30代以下の若い世代が占めていることからも、個人レベルでの情報発信が活発化していることが伺えます。

  • 「ながら聴き」の価値と情報過多社会への適応: 現代社会は情報過多であり、視覚に訴えかける動画コンテンツなどは時に「疲労感を感じる」という声も聞かれます。一方で、音声メディアは「手が空いていなくても、耳で情報を得られる」「家事の時間を有効活用できる」といった「ながら聴き」のメリットがユーザーに高く評価されています。また、「動画視聴と比較して疲労感を感じることがない」という意見もあり、他の作業をしながらでも効率的に情報を得たいという現代人のニーズに合致しており、多忙な中小企業の経営者の皆様にとっても、情報収集や発信の新たな選択肢となり得るでしょう。

このように、テクノロジーの進化とユーザー行動の変化が相まって、音声メディアは単なるエンターテインメントの枠を超え、情報収集、コミュニケーション、そしてビジネスにおける新たなフロンティアとして急速に存在感を高めています。

2. Z世代が牽引する「耳」の時代

「はじめに」で触れたように、今、音声メディアは新たな情報収集やコミュニケーションのフロンティアとして注目されています。この変化を特に強く牽引しているのが、デジタルネイティブである「Z世代」です。

Z世代とは、2020年時点で15歳から23歳にあたる層を指します。彼らは、サブスクリプション型の音楽配信サービスが普及し始めた時期に、音楽や音声コンテンツに積極的に触れ始めた世代です。彼らの音声メディアとの関わり方には、既存の世代には見られない特徴が多々あります。

(1) Z世代の「ながら聴き」とマルチタスクなメディア利用

Z世代は、日常的に音声を活用する「耳」の習慣が非常に発達しています。

高い音楽・音声配信サービスの利用率

  • Z世代の約7割が「定期的に音楽を聴く」と回答しています。

  • 「音楽配信サービス」の利用率は約6割に上り、2019年から2020年にかけて利用率が2割強から4割強へと大きく伸長しました。

  • デジタル配信ラジオ、ポッドキャスト、音声アシスタントサービスといった「音声サービス」全体の利用率も約3割に達しています。

  • 特に、新型コロナウイルス感染症の影響で在宅時間が増えたことも、Z世代が音声メディアに触れる機会をさらに増やしたと考えられます。

「W音声」に代表されるマルチタスクな聴取行動  Z世代の半数以上が、音の出るメディアを2つ同時に利用する「W音声」を体験しています

  • 具体的には、音楽を流しながら「音を出してテレビを見た」経験があるZ世代は6割、音楽を流しながら「音を出して動画を見た」経験があるZ世代は3人に2人に上ります。

  • これは、音の出る複数のメディアに同時に接触することへの抵抗感が少ないことを示しています。

  • 彼らは、その時々でより聞きたい方に耳を傾けるなど、音声ならではの特性やニーズに合わせて「耳」をマルチタスクに使いこなす新しい楽しみ方を生み出しています。

  • このような「手が空いていなくても、耳で情報を得られる」「家事の時間を有効活用できる」といった「ながら聴き」のメリットは、Z世代だけでなく、多忙な現代人全体に評価されており、音声メディアが情報過多社会に適応する手段として重宝されていることが伺えます。

(2) 音声コミュニケーションへの高い親和性と情報発信の活性化

Z世代は、単に音声コンテンツを消費するだけでなく、音声によるコミュニケーションや情報発信にも高い親和性を示しています。

テキストより「通話」を好む傾向

  • Z世代の約半数が「テキストチャットやメールより通話の方が楽だ」と回答しており、文字での会話よりも通話を好む傾向が見られます。

  • 特に女性のZ世代では「読む」よりも「聞く」ほうが情報が頭に入りやすいと感じる割合が高く、他の世代を10ポイント以上上回っています。

  • 彼らはスマートフォンや音声入力機能の進化と共に育っており、キーボード入力よりも音声入力に馴染みがあるため、音声でのコミュニケーションや情報収集に対して肯定的です。

  • さらに、コロナ禍で気軽に人に会う機会が減った中で、「人の話し声」(ラジオやポッドキャストなど)が寂しさを紛らわせ、ストレス解消や勇気づけにつながったというZ世代の声も多く聞かれます。

若年層による情報発信の活性化

  • ポッドキャストは、法人メディアだけでなく個人による情報発信の手段としても注目されており、実際にポッドキャストユーザーの13.5%が番組配信経験者です。

  • 注目すべきは、この配信経験者の約8割が30代以下(15~29歳が63.7%、30代が18.4%)である点です。

  • これは、Z世代が単なるコンテンツの消費者ではなく、自らも積極的に音声コンテンツを制作し、情報発信を行っている「クリエイター」としての側面も持っていることを示しています。

(3) Z世代の動向が示すビジネスチャンス

Z世代のこれらの音声メディアに対する高い親和性と積極的な利用・発信行動は、中小企業の皆様にとっても大きなビジネスチャンスを秘めています。

拡大するデジタル広告市場と音声広告

  • 日本の総広告費は拡大傾向にあり、中でもデジタル広告市場は急拡大しています。特に、2010年以降のスマートフォンの普及は、デジタル広告市場全体の急拡大を後押ししました。

  • 広告出稿の主要プレーヤーは、従来のテレビやラジオ、新聞、雑誌といったマスメディアからデジタル広告へと変化しており、インターネット広告費はテレビ広告費を上回り、マスメディア4媒体全体の広告費をも上回っています。

  • このデジタル広告市場の中で、「音声」を主軸とした「デジタル音声広告」の市場も急速に成長しています。

  • 2020年には16億円だったデジタル音声広告市場は、2025年には420億円規模に達すると予測されています

  • 広告主がブランディング目的でデジタル音声広告への出稿を増やすことや、大手広告事業者の新規参入がこの市場拡大を牽引すると見込まれています。

Z世代の「耳」の習慣は、情報収集の効率性やコミュニケーションのあり方、さらには情報発信の多様性において、既存のメディアの枠を超えた新しい価値観を生み出しています。彼らが音声メディアを通じて何を求めているのか、どのように活用しているのかを理解することは、今後のビジネス戦略を考える上で不可欠な視点となるでしょう。

3. ポッドキャストの普及と若年層(Z世代)が牽引するトレンド

近年、日本国内でポッドキャストの利用が急速に拡大しており、特に若い世代であるZ世代がこのトレンドを牽引しています。彼らのデジタルネイティブな感性や情報収集への意欲が、音声メディアであるポッドキャストの普及を後押ししていると考えられます。

国内利用の実態とZ世代の貢献

日本国内のポッドキャストユーザー数は推計1,680万人に達しており、国内の利用率は15.7%です。この利用率は、TikTok(8.3%)やmixi(3.2%)の利用率を上回る結果となっています。

特に、15歳から29歳のZ世代のポッドキャスト利用率は28.1%と高く、この年代においては4人に1人以上がポッドキャストユーザーであることが分かっています。朝日新聞ポッドキャストのユーザーに限ると、約半数にあたる46.5%がZ世代であり、全体の3分の2(65.7%)が15歳から39歳と、特に若い層に強く支持されていることが明らかになっています。

情報感度の高いユーザー層

ポッドキャストユーザーは、非ユーザーに比べて情報感度が高い傾向が見られます。彼らは「製品や新しいサービスを取り入れるのが人よりも早い」「新しい流行について人に聞かれることが多い」と回答する割合が、非ユーザーよりも2倍以上高いです。これは、ポッドキャストが多様な情報を効率的に収集する手段として認識されていることを示唆しています。

職業構成を見ると、ポッドキャストユーザーは非ユーザーに比べてビジネスパーソンや学生が多い傾向にあります。特に、経営層や管理職などの企業における意思決定層の割合は、非ユーザーの9.6%に対し、ポッドキャストユーザーでは14.9%と高くなっています。朝日新聞ポッドキャストユーザーでは、企業の意思決定層が20.0%、ビジネスパーソンが82.7%を占め、さらに専門職の割合も顕著に高いです。

主な聴取プラットフォームとシチュエーション

ポッドキャストを聴く際に最も利用されているプラットフォームはSpotifyで41.8%であり、次いでApple Podcast(22.2%)、Amazon Music(19.8%)が続きます。Spotify、Apple Podcast、Amazon Musicは15〜39歳で半数を超える利用率を示す一方で、Webサイトでの利用は50代以上で過半数を占めるなど、プラットフォームによって利用年代に違いが見られます。

聴取シチュエーションは、新型コロナウイルス感染症拡大以前の生活スタイルへの回帰を反映しており、「就寝前」(29.7%)、「歩いている時」(23.5%)、「公共交通機関」(22.6%)、「車の運転中」(22.4%)など、移動中の聴取が増加しています。これは、ポッドキャストが「手が空いてなくても、耳で情報を得られる」という「ながら聴き」の機能性で高く評価されていることと関連しています。

人気のジャンル

ポッドキャスト番組のジャンルは年代によって異なる傾向があります。全体では「ニュース」(33.4%)が1位、「コメディ/お笑い」(30.4%)が2位ですが、40代以上のユーザーでは「ニュース」が最も人気である一方、15歳から39歳のユーザーでは「コメディ/お笑い」が最も人気のジャンルとなっています。また、前回調査と比較して「音楽解説」「ビジネス」「アート」のジャンルもポイントが上昇しています。

Z世代は、ポッドキャストの情報を元に検索(64.4%)や商品・サービスの購入(40.6%)を一定頻度で行うなど、積極的な行動も見せています。朝日新聞ポッドキャストユーザーでは、さらに高い割合で検索(82.9%)や購入(65.2%)を行っています。

これらの要因から、Z世代がポッドキャストの普及を強く牽引し、デジタル音声広告市場の急速な拡大にも寄与していることが伺えます。

4. Z世代が「耳」を使いこなす理由:新しい情報摂取とコミュニケーションの形

デジタルネイティブとして育ったZ世代は、既存のメディアの枠を超え、独自のスタイルで情報を摂取し、コミュニケーションを取る傾向が顕著です。その中でも特に注目されているのが、「耳」を介した音声メディアの活用です。彼らはどのように「耳」を使いこなし、それがどのような新しいトレンドを生み出しているのでしょうか。

「W音声」の常態化:耳のマルチタスク化が進むZ世代

Z世代は、複数の音声メディアを同時に利用する「W音声」を日常的に実践しています。株式会社ビデオリサーチとスポティファイジャパン株式会社の共同研究によると、Z世代の音声メディアユーザーの半数以上が、音楽を流しながらテレビを見たり動画を見たりする経験があることが明らかになりました。具体的には、音楽を流しながら「音を出してテレビを見た」経験があるのは6割、音楽を流しながら「音を出して動画を見た」経験があるのは3人に2人に上ります。

これは、音の出る複数のメディアに同時に触れることへの彼らの抵抗感が少ないことを示しています。Z世代は、聞きたい情報やコンテンツに合わせて器用に耳を傾け、耳をマルチタスクに使いこなす傾向が見られます。この「W音声」の常態化は、これまでになかった新しい音声メディアの楽しみ方を生み出していると言えるでしょう。

音声コミュニケーションへの親和性:読むより聞く世代

Z世代は、テキストベースのコミュニケーションよりも音声でのやり取りに高い親和性を持っています。調査結果では、Z世代の約半数が「テキストチャットやメールより通話の方が楽」だと感じていることが示されています。これは男女ともに共通する傾向です。

特に、女性Z世代では45%が「読む」よりも「聞く」方が頭に入りやすいと回答しており、これは他の世代に比べて10ポイント以上高い数値です。テレビの音声操作やスマートフォンでの音声入力機能の進化と共に育った彼らは、キーボード入力よりも先に音声入力を覚えた人も少なくないため、音声を通じた情報収集やコミュニケーションに対して非常に好意的であると推測されます。

コロナ禍における役割:寂しさを紛らわせ、ストレスを発散する手段

新型コロナウイルス感染症の拡大により対面でのコミュニケーションが制限される中で、音声メディアはZ世代にとって重要な役割を果たしました。インタビュー調査からは、気軽に人と会えない状況で、音声メディアによって気が紛れたり、勇気づけられたりしたというZ世代の声が多く聞かれています。

特に女性にその傾向が強く、ある20歳の大学生は「深夜ラジオを聴いていると世の中はまだ人が動いているんだ、と寂しさを紛らわすことができた」と語っています。また、別の19歳の大学生は「雑談配信を聴くと寂しさがやわらいだりするし、暇な時間が暇じゃなくなる」と回答しており、ラジオコンテンツやポッドキャスト、音声SNSに対するZ世代の受容性の高さが伺えます。

これらの要因から、Z世代が「耳」を使いこなし、音声メディアを情報収集、エンターテイメント、そして心理的な支えとして活用する新しいライフスタイルを確立していることが明らかになります。彼らの行動は、今後の音声メディア市場の動向を大きく左右するでしょう。

5. 動画コンテンツとの差別化:「ながら聴き」と「疲労感の少なさ」

ポッドキャストの普及が加速する中で、特に注目されているのが、動画コンテンツにはないその独自の利点です。Z世代をはじめとするユーザーたちは、ポッドキャストが提供する「ながら聴き」の機能性と、視聴に伴う「疲労感の少なさ」を高く評価しており、これが他のデジタルメディアとの差別化要因となっています。

「ながら聴き」の機能性

ポッドキャストの大きな魅力の一つは、「ながら聴き」ができる機能性です。ユーザーからは、「手が空いていなくても、耳で情報を得られる」という声や、「家事の時間を有効活用できる」といった評価が多く聞かれます。例えば、料理中や移動中、あるいは軽い運動中など、手が塞がっていても情報を得られる利便性は、多忙な現代人、特にマルチタスクを日常的にこなすZ世代にとって、非常に価値が高いとされています。コロナ禍以前の生活スタイルへの回帰が進む中で、「就寝前」や「移動中(歩いている時、公共交通機関、車の運転中)」の聴取が増加していることからも、ポッドキャストが「ながら聴き」に適したメディアとして活用されていることが伺えます。

動画コンテンツとの比較優位性

さらに、ポッドキャストは動画コンテンツと比較して、いくつかの明確な優位性を持っています。ユーザーの声からは、「動画視聴と比較して疲労感を感じることがない」という点が挙げられています。画面を見続ける必要がないため、目の疲れや集中力の消耗が少なく、よりリラックスした状態でコンテンツを楽しむことができます。

また、「テレビを見て聴くよりも耳だけで聴くので、頭に入りやすいし、記憶に残る」といった意見もあり、音声のみに集中することで、情報がより深く定着しやすいという特性も評価されています。視覚情報に囚われず、耳から入る情報に特化することで、集中力が高まり、結果として学習効率や情報の吸収率が向上すると感じているユーザーも少なくないようです。

これらの特性は、情報過多の現代において、効率的かつ負担の少ない情報摂取手段を求めるユーザーのニーズに応えるものであり、ポッドキャストが今後も独自のポジションを確立し、成長していく要因となるでしょう。

6. ポッドキャストの新たな可能性:配信者とユーザーの積極的な行動

デジタル化が加速する現代において、ポッドキャストは単なる情報受容のツールに留まらず、配信者とユーザー双方の積極的な行動を促し、新たな可能性を広げています。特に、若年層を中心とした活発な利用動向は、このメディアの未来を示唆しています。

個人配信の広がり:誰もが情報発信者に

ポッドキャストは、誰もが手軽に情報を発信できるプラットフォームとしての側面を強めています。調査によると、ポッドキャストユーザーの13.5%が番組配信経験者であることが明らかになりました。さらに特筆すべきは、その配信経験者のうち8割が30代以下のユーザーである点です。具体的には、15~29歳が63.7%、30代が18.4%を占めています。このデータは、サブスクリプションの音楽配信サービスが登場した頃に多感な年代を過ごした「Z世代」(2020年時点で15~23歳と定義)が、自らもコンテンツクリエイターとして活躍している現状を示しており、若年層を中心に「聞く」だけでなく「発信する」という行動が日常化していることを裏付けています。

ユーザーの番組への積極的な関与:「推し活」からリアルな交流まで

ポッドキャストユーザーは、番組に対して非常に積極的に関わっています。20代以下のユーザーは、「番組のグッズを買う」「おたよりを送る」といった「推し活」に代表されるような行動に積極的な傾向が見られます。一方で、30代・40代のユーザーは、番組イベントへの参加、リスナー間での交流、さらには配信者とSNS上や直接対面しての交流を求める傾向が強いことが示されています。特に「朝日新聞ポッドキャスト」のユーザーは、ユーザー全体よりも番組へのコミットメントが総じて積極的であり、番組イベントへの参加やSNSでの交流に高い関心を示しています。これは、音声メディアが一方的な情報提供に終わらず、双方向のコミュニティ形成や熱量のあるファン活動を促進する力を持っていることを示唆しています。

情報から購買行動への転換:高まる影響力

ポッドキャストで得た情報が、ユーザーの購買行動に直結するケースも増えています。ポッドキャストで聴いた情報に基づいて、ユーザーの64.4%が一定の頻度で検索を行い、40.6%が商品やサービスを購入していることが明らかになっています。この傾向は、「朝日新聞ポッドキャスト」ユーザーでさらに顕著であり、82.9%が検索を行い、65.2%が購入に至っています。これは、ポッドキャストが単なる情報源としてだけでなく、消費者の購買意欲を喚起する強力なメディアとしても機能していることを示しており、広告主にとって新たなマーケティングチャネルとしての価値が高まっています。

YouTubeユーザーとの比較:若年層と高感度層の取り込み

ポッドキャストユーザーは、一般的な動画プラットフォームの代表格であるYouTubeユーザーと比較しても、特徴的な属性を持っています。ポッドキャストユーザーはYouTubeを月1回以上利用するユーザーと比較して、15~29歳の若年層の比率が高い傾向にあることが示されています。また、ポッドキャストユーザーは情報感度や年収も高い傾向が見られます。特に「新しいサービスや製品を取り入れるのが早い」「新しい流行について人に聞かれることが多い」といった情報感度の高さが際立っており、また「自分と違う意見も積極的に触れるように心がけている」といったバランス感覚も持ち合わせているとされています。このような属性を持つユーザー層を獲得していることは、ポッドキャストが単なるエンターテイメントとしてだけでなく、質の高い情報を求める層にリーチするメディアとしての潜在能力を秘めていることを示しています。

これらの動向は、ポッドキャストが今後も成長を続け、情報摂取、コミュニケーション、そしてビジネスにおける新たな可能性を切り開いていくことを示唆しています。

7. おわりに:音声メディアが拓く未来

デジタル化の波と若年層を中心とした利用者の拡大を背景に、音声メディアは新たな可能性を切り開き、コンテンツと広告の双方においてさらなる成長が期待されています。

近年、日本の広告市場全体が拡大傾向にある中で、特にデジタル広告市場の規模は急速に拡大しており、この数年間でマスメディア4媒体(テレビ・ラジオ・新聞・雑誌)の広告費を上回るメインプレーヤーへと変化しました。2021年にはインターネット広告費が2兆7,052億円に達し、テレビ広告費を初めて上回っています。このデジタル化の進展は、消費者のインターネット利用時間の増加と密接に関係しており、9年間でインターネット利用時間は2.3倍に、選択可能情報量は約531倍に急増しています。特に2010年以降のスマートフォンの普及は、デジタル広告市場の急拡大を後押ししました。世界のコンテンツ市場においても、デジタルコンテンツが今後の成長を牽引すると見込まれており、2021年時点でデジタルが世界のエンターテイメント&メディアの収益の69%を占めています。

このようなデジタル化の潮流の中で、若年層(特にZ世代)が音声メディアの利用を積極的に拡大しています。Z世代(2020年時点で15~23歳)は、サブスクリプションの音楽配信サービスが登場した頃に多感な年代を過ごした世代であり、他の世代と比較して「定期的に音楽を聴く」割合が高く(約7割)、音楽配信サービスの利用率も約6割に達しています。また、彼らの「耳」はマルチタスクをこなすことに長けており、半数以上が音楽を流しながらテレビを見たり動画を見たりする「W音声」を経験しています。Z世代の約半数が「チャットやメールよりも通話の方が楽」と回答しており、特に女性Z世代の45%は「読む」よりも「聞く」方が頭に入りやすいと感じています。コロナ禍においては、「人の話し声」(ラジオ・ポッドキャスト等)で寂しさを紛らわせたり、ストレスを発散したりするニーズも高まりました。

ポッドキャストの国内利用状況を見ると、2022年12月時点で国内ユーザーは推計1,680万人に達し、特に15~29歳のZ世代の利用率は28.1%と4人に1人以上がポッドキャストユーザーとなっています。ポッドキャストユーザーの約4割(39.6%)が20代以下であり、30代以下が過半数を占めています。さらに、ポッドキャストユーザーの13.5%が番組配信経験者であり、そのうち8割が30代以下のユーザーであることから、若年層を中心に誰もが情報発信者になれる環境が広がっていることがわかります。

ユーザーの番組への関与も非常に積極的です。20代以下のユーザーはグッズ購入やおたよりといった「推し活」に積極的な一方、30代・40代はイベント参加やリスナー・配信者との交流を求める傾向があります。ポッドキャストで得た情報に基づいて、ユーザーの64.4%が検索を行い、40.6%が商品・サービスを購入しており、特に「朝日新聞ポッドキャスト」ユーザーではこれらの行動がさらに積極的です。このような購買行動への転換が見られることは、ポッドキャストが情報源だけでなく、消費者の行動を喚起するメディアとしての価値を高めていることを示しています。

広告市場においても、音声メディアの成長は顕著です。米国のポッドキャスト広告市場は、2021年に前年比72%増の14.4億ドル(約1,930億円)に達し、2024年には42.2億ドル(約5,600億円)以上に成長すると予測されています。日本国内のデジタル音声広告市場も同様に、2020年の16億円から2025年には420億円規模へと急速な拡大が見込まれています。

これらの動向は、音声メディアが情報感度の高い若年層を中心に広く受け入れられ、エンターテイメントから学習、そして購買行動へと多岐にわたる影響を与え始めていることを示しています。デジタル化の進展とユーザーの積極的な行動が相まって、音声メディアは今後も多様なコンテンツと広告の場として、その可能性をさらに広げていくでしょう。

参考資料

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